IE9ピン留め

「カワハギの肝」読了

京料理をこきおろす食エッセイがあると聞いて、興味津々で読みました。

著者は杉浦明平。わたしは知らなかったのですが、イタリア・ルネサンスを研究した方だそうです。
本人いわく「食いしんぼうとういうより偏食家」というだけに、好き嫌いがはっきりしています。基本的には、子どものころから食べつけていないものに対しては手厳しいです(ちなみに、愛知県の海岸部の出身)。
ただ手厳しいのではなく、満足な食生活のために、売っていないものは自分で育てるのですから、口ばかりではありません。だから、安心して痛快さを楽しむことができます。

問題の(?)京料理についてですが、
京都は海から遠くて、海の幸にめぐまれていない。古代には日本人も鳥獣の肉を食べ、チーズなども食べていたけれど、平安朝以後仏教の影響もあって肉食の風習がなくなってからは、琵琶湖の淡水魚か塩もの干ものしか手に入らなくなったのだから、そんな土地で料理ができるわけがない。中世の公卿の日記に出てくる食べものでわたしたちの食欲をかき立てるようなものはほとんどない。うまい料理がつくれぬかわり、目でごまかそうとして、いわゆる四季の色をそえた日本料理が発達したのであろうが、肝心の味については、文化の中心地京都で、うまいものといったら、漬け物だけということになった。

この次の一文が強烈で、手厳しいを通り越して、かなりひどい(文庫本葉書に使うかもしれないからここには引用しませんが・笑)。
でも、著者の言い分について、わたしは半分くらいは賛成してます。ここまでは言い切れないけれど。

前からなんとなく「おばんざいって、どれもこれも副菜だよね」と思っています。

著者と違って自信のないわたしはこのことを言うだけでびくびくしているのですが、わかりやすい主菜なしで副菜ばかりずらずら並んでいる食卓を想像すると、「パンはやらずにスープでごまかし」という一節も思い出され、貧しさを感じてかなしい気分になります。
そのせいか、著者の過激な意見もわりとすんなり受け入れられる、正直なところスカッともするのです。

カワハギの肝 (光文社文庫)

杉浦 明平 / 光文社

# by takibi-library | 2012-01-24 17:25 | いつも読書 | Trackback | Comments(0)

図書館で借りた本、たぶん誰にも借りられてなかったと思われる。

日曜日にブックピックの新年会で教えてもらった本を図書館で借りました。

カウンターで受け取ったときも「まだぴかぴかだな」と思ったのですが、2010年に刷られたものであるうえに、まだ誰も読んでいないように見えます。というのも、しおりひもが動かされた形跡がまったくないのです。

すてきすぎる。

きっとこれからもこの本を借りたいという人は限りなく少ないはずで、わたしは読み直したいと思ったら、その前に読んだままの状態で借りることができるかもしれないのです。
まだ読みはじめてもいないけど、そんな想像をするだけでうっとりします。

こっそりひとりじめするつもりなので、借りた本が何かはひみつにしておきます。

でも、こんな良書が不人気とは。
誰も借りない本がある図書館とは。
財政難の区の限られた予算で買っている本が、誰にも読まれていないというのは。

いろいろ考えると、うっとりが吹き飛ばされてしまうけど、今日借りた本は、天気の悪そうなこの週末のお楽しみにしたいと思います。
# by takibi-library | 2012-01-20 15:19 | いつも読書 | Trackback | Comments(2)

「クリスマスのフロスト」読了

おもしろかった! 久しぶりに「これははまる!」と思いました。

フロストは、イギリスの片田舎の警察署に勤務しています。ある事件での活躍がきっかけで警部の肩書を持ってはいますが、よれよれのコートがトレードマーク。このフロスト警部のキャラクターが原動力となっているミステリーです。

クリスマス休暇はもうすぐだというのに、事件はそんなことはおかまいなしに続々と発生します。それらに対しモグラたたきのように奮闘するフロストですが、時間も身なりも気にせず、直感で(見ようによってはやみくもに)突き進み、話題といえば死体か下ネタ。その様子に、ロンドンから赴任したばかりの新米刑事のクライヴはいつもいらだっています。
フロストとクライブ、経歴、ポジション、世代、嗜好、なにからなにまで合わないふたりの組み合わせがおもしろいです。

クライヴは反発してばかりですが、フロストのほうは気にもせず、ときどき打ち明け話をします。これがいい!
打ち明け話にクライヴは受け答えに困るのですが、職場って、打ち明け話なくしては回らないものなのだから。
続編読む気満々なので、このさきふたりの関係がどう変化していくのか、それが描かれるのか、楽しみでたまりません。でも、すぐは買いません。もったいないからここぞというときにとっておこうと思います。

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

R.D ウィングフィールド / 東京創元社

# by takibi-library | 2012-01-19 21:42 | いつも読書 | Trackback | Comments(0)

「大きなハードルと小さなハードル」読了

苦手な物語、というのがあって、(経済的な)貧しさの中に描かれるものがそのひとつです。

これまで苦労らしい苦労をしたことがなく、それはしなくてすむように両親が努力をしてくれたことなので、ありがたいと思っていますが、そのために、食うに困るとか、公共料金が払えないとかいう状況に対して、人並み以上の「恐怖感」があります。想像するだけで落ち着きがなくなり、自分でもびっくりしますが、ほんとうにぞっとします。

かといって、貧しさが主題でないものを含めて、貧しさの中に描かれる物語はたくさん、たくさん、あります。すべてを避けて通ることもあえてしていません。大丈夫そうなら読むし、これは無理、と思えばやめてしまいます。
ただ、読むかやめるかは、物語の内容自体よりも、わたし自身のコンディションによるところが大きくて、受け止められるタイミングに読めるかどうかが問題です。

前置きが長くなりましたが、「大きなハードルと小さなハードル」。「海炭市叙景」の佐藤泰志の「秀雄もの」と言われる連作短編を中心にまとめられた作品集です。

故郷を出て東京で働く秀雄には、若さがもたらすエネルギーだけはあって、それをどこへ向けたらいいかわからず、望みもしないほうへ爆発させてしまうことがしばしば。その行動そのものには共感ができないけれど、彼が抱える「あきらめられない」気持ちはひしひしと伝わってきました。そして、いつかは彼もあきらめることを想像しました。それによって得られる、ある種の落ち着きも。

その「秀雄もの」の後に続く、「僕」の物語たち。この秀雄から僕への続き方には目をみはりました。最後の「夜、鳥たちが啼く」で感じる、自分なりの前へ進む明るさがうれしかったです。

なんだかいつも以上にまとまりがないけれど、明日、職場の人にこの本を貸すことにしてしまったので、とりあえず感じたことを書いておくことにしました。

・・・ならば、これも書かなくちゃ。堀江敏幸さんの解説がこれまたすばらしいです。

大きなハードルと小さなハードル (河出文庫)

佐藤 泰志 / 河出書房新社

# by takibi-library | 2012-01-11 22:31 | いつも読書 | Trackback | Comments(0)

「図書室たき火」の由来

最近、といっても少し前ですが、このブログの名前に興味を持ってくださる方がいたので、あらためて書いておこうと思います(わたしは当初、別のブログサービスを使っていましたが、それがサービス停止となり閲覧もできなくなったので。)

登山が趣味の友だちは、山でたき火をするそうです。
たき火を囲むと、ふだんは口にしないですませてしまう、でも大切なことを話せるのだとか。

その話を聞いて思ったんです。
わたしにとって、本を読むことは、本とたき火を囲むような感じだと。

たき火を囲むような気持ちになれる本を集めた、私の図書室(図書館、ほど大きくなくていい)を作ったつもりで、それを「図書室たき火」と名づけました。

だから、このブログは「図書室たき火通信」です。

これからも、よろしくお願いします。

# by takibi-library | 2012-01-08 11:27 | このブログについて | Trackback | Comments(4)

行きつけの本屋さんについて

最近あるきっかけで、全国で新しい書店ができたり、長く続いた書店が消えたりするニュースを知るようになりました。

日々それらを読んで思うことは、わたし自身が限られた書店しか行っていないということです。
「ふつう」がどれくらいかは知らないし、なんとなく、本好きとしては少ないんじゃないか、というあいまいな感覚ですが。

思い返してみると、これまで生活圏の変化に合わせて、1~2店の決まった書店に通ってきました。生活圏が変われば、通う書店も変わる、というのがわたしの基本のようです。せっかく思い出したので(笑)、メモしておくことにします。

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わたしの書店デビュー(?)は遅く、自覚的には中学に上がってからです。小学生のころは、父に本を買ってきてもらっていました。読んだ本の巻末のシリーズ紹介や、はさまっている新刊案内のチラシを見て、次の本をリクエストすると数日後届く、というしくみです。
父は勤務先に出入りしていた書店さんに注文していたと思われます。たぶん、紀伊国屋書店。私の本にカバーはありませんでしたが、父の本には紀伊国屋のカバーがよくかかっていたので。

中学(徒歩通学・通学路に書店なし):
とくに決まった書店なし。家族と買い物や外食に出かけたときに寄ることができるところ。

高校(電車通学):
学校帰りに途中下車して、西船橋の三省堂書店、すばる書店へ。

大学(電車通学片道2時間):
いちばん買っていたのは大学生協(割引があったから)。あとは日本橋の丸善(もちろん、まだ丸の内の丸善はない時代)、銀座の教文館書店、近藤書店(もうなくなってしまった)。学校は横浜でしたが、乗換駅の日本橋のほうが親しみがあって、横浜の本屋さんにはほとんど行きませんでした。

会社勤め(西新宿勤務):
高層ビルに入っている、福屋書店や丸善ブックメイツなどなどを転々と(開店したり移転したり閉店したり忙しかったな)。たまに南口の紀伊国屋。東急池上線沿線に住んでいたころは五反田のあおい書店が好きでした。Amazonもよく使ってました。

退職後:文庫本葉書を作るようになってから、往来堂書店ばかり。

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話題の書店もそんなに遠くなく、行けば行ったでおもしろかろうと思うのですが、面倒くさくて(!)なかなか気が向きません。とくに大型書店は、もはや体質として無理なのではないかと。果てしなさにげんなりして、購買意欲がなくなってしまうのです。これはこれで「いかんな~」と思うのですが、もうどうにもなりません。

と書いていて、往来堂がなくなったら?と一瞬想像して、ほんとうにおそろしくなりました。
そうならないように、これからもがんばって往来堂で本買うぞ。(あれ?)
# by takibi-library | 2012-01-08 11:06 | いつも読書 | Trackback | Comments(0)

2011年の3冊

今年はブログに読書記録を書かずにすますことが多々あったため、3冊選ぶのに苦労しました。2011年の反省点として、来年(つまり、明日から)改善したいと思います。

それでも、3冊は選びました。傾向はバラバラですが、共通して言えるのは何かしら「がつん」ときた、ってことかな。

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

小川 洋子 / 文藝春秋



3冊は順不同なのですが、1冊選べと言われたら、たぶんこの「猫を抱いて象と泳ぐ」にすると思います。この本を読んで、物語に餓えたら小川洋子さん、と心に決めました。

海炭市叙景 (小学館文庫)

佐藤 泰志 / 小学館



佐藤泰志という作家を知るきっかけになった本。華やかではないけれど、ていねいな感じが好きです。ちょうど今「大きなハードルと小さなハードル」を読んでいます。

せんだいノート―ミュージアムって何だろう?

仙台市市民文化事業団



「せんだいノート」については、まだこのブログには書いていない、いえ、正確に言うと、書きかけで「非公開」にしてあります。まだ未消化のことが多くて、書ききれていません。
未消化と言っても「せんだいノート」の自体の内容ではなくて、6月に仙台を訪ねたこと、友だちがたくさんできたこと、彼女、彼たちとの(おもにtwitterでの)交流からわたしが考え続けていることが、まだ自分の中で落ち着かないのです。

「せんだいノート」のこと、仙台のこと、1月中にUPしたいと思います。

では、来年もどうぞよろしく。
# by takibi-library | 2011-12-31 11:39 | いつも読書 | Trackback | Comments(3)

「電化文学列伝」読了

立て続けに長嶋有さんの本を読んでいます(調子に乗ってもう1冊続けるかもしれません)。

いろいろな小説に出てくる電化製品について語った、非常に変わった切り口のエッセイ集です。わたし自身はとりたてて電化製品に注目することがなかったので、読んだことがある作品でもまったく覚えがないものもありました。けれども、長嶋さんの指摘は、その電化製品のそもそもの役割とその場面での必然性が、物語の中でちょうどバランスしていることを教えてくれました。
もしかしたら、長嶋さんが感銘を受けているほど作者は周到にその電化製品を持ち出してきたわけではないのでは?といういじわるな憶測が湧いてこなくもありませんが、そこは気にしないほうが楽しいので、忘れることにしました。

こういう文学エッセイを読むと、さらに読みたい本が増えます。それだけはほんとうに困る。うれしいけど、困る。

電化文学列伝 (講談社文庫)

長嶋 有 / 講談社

# by takibi-library | 2011-12-24 10:54 | いつも読書 | Trackback | Comments(2)

「ぼくは落ち着きがない」読了

久しぶりにスカッとした。そんな読後感。

ある高校の読書部のなんてことない日常を描いた物語。でも今のわたしが読むと、すべてがまぶしく見えました。高校ってこんなだったな。
わたし自身は部活動の経験がないのですが、違うクラスの友だちとのつながりや、放課後の図書室で過ごす時間の質感が、「こんなだった」と思いました。

同い年でも大人に見える女子の頼もしい様子、やんちゃな男子の信念を垣間見たとき、いちいちどきどきしていたなぁと思います。
この本を読む時間は、そんなことを思いつつ、本の中の高校生たちをほほえましくながめるのが楽しいひとときでした。

この先、ちょっと楽しい気分が足らないとき、読み返したいです。


ぼくは落ち着きがない (光文社文庫)

長嶋 有 / 光文社

# by takibi-library | 2011-12-18 14:08 | いつも読書 | Trackback | Comments(0)

なぞのケーキ、「トロンコ」

「トロンコ」。丸木をかたどったケーキの名前です。

昭和35年初版の「家庭でできる和洋菓子」(婦人之友社)に「トロンコ」の作り方が載っているのですが、この、母が結婚した頃に買い求めた本以外で「トロンコ」の名を見たことはありません。
わたし自身が中学生か高校生になると、「ビュッシュ・ド・ノエル」という言葉を覚えて、丸木の形をしたケーキの名前として呼び習わしてきました。

今年のはじめ、空想製本屋さんの製本教室で、母が使い込んで、わたしがらくがきをしたこの本を糸とじ、布張りで製本したのですが、そこでも教室のみんなで「トロンコって?」と話しました。
それでも、あえて探究心を持たず、へんなの、と思って過ごしてきたのですが、思いがけずヒントが舞い込んできたのです。

ある宅配ピザのお店のクリスマスメニューのチラシに「Tronco di natale」というロールケーキが出ていたのです。しかし、残念なことに、写真を見る限り、フルーツをちりばめてあるものの、どう見てもふつうのロールケーキで、丸木らしさはこれっぽっちもありません。

トロンコとはロールケーキのこと?

どうもすっきりしないものの、イタリア語にはtroncoという単語がある、ということがわかったので、わかりそうなNさんにこっそり質問したところ、伊英辞典で調べてくれました。

tronco=trunk

つまり、木の幹!やはり、そうだったのか!

結局のところ、tronco di nataleは、フランス語だとbûche de Noëlになるわけで、みんなクリスマスの薪ということなのでした。

でも、昭和30年代に、なぜイタリア語の名前をつけたのだろう。
ほかには「ロシア菓子(一)」(三まである)みたいな、工夫のない名前もついているのに、トロンコだけ、イタリア語。

意味はわかったけれど、不思議な感じはまったく抜けないのでした。
でも、なんか楽しかったから、よしとする。
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# by takibi-library | 2011-12-08 21:12 | くらし | Trackback | Comments(0)
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人+食+本=図書室たき火


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