「春の戴冠(1)」:物語のはじまり

辻邦生「春の戴冠」全4巻。シンプルでかわいらしさもある装幀なのですが・・・取り寄せを頼んだ往来堂の店員さんの間では「(辻邦生・・・)渋いですね」という評判だったらしい。

それはさておき。
「西行花伝」もそうだったのですが、語り手が敬愛する人物についてひたすら語る話に弱いです。「西行~」は弟子が師匠を語りましたが、「春の戴冠」は、ひとりの老人が親友について語ります。

親友とは芸術家のボッティチェルリ。語り手は、フェデリゴという引退した古典語講師。フェデリゴは、花の都と呼ばれたフィオレンツァがしだいに荒れ果てていく中で、ボッティチェルリの絵を見つめながら、彼と過ごした時代に思いをはせて過ごします。
そして「サンドロ(=ボッティチェルリ)のためにも、私自身のためにも、私たちが過してきたフィオレンツァの生活のすべてを詳細に描き物語ってゆきたいという考えを、日々、強めていった」のです。

この、まえがきのような部分だけで、じんとします。人への思いを表現する辻邦生の文章はほんとうにうつくしい。
今はようやく幼少期がはじまったところ。久々の長編に少し緊張しつつ、にじりにじり読みすすめます。

春の戴冠〈1〉 (中公文庫)

辻 邦生 / 中央公論新社


↑ほらー、かわいいっしょ。
[PR]

by takibi-library | 2009-02-07 22:39 | いつも読書 | Comments(0)  

<< ワークショップのお知らせ 本屋さんは楽しい。 >>