鮮やかな話と、こわい話を読みました。

2冊読みました。

まず、鮮やかな話。ディクスン・カーの「皇帝のかぎ煙草入れ」です。
先日の2次会@ブックオフで買ったもので、大学時代にはミステリー研究会に所属していたWさんのおすすめ。あらすじに
「このトリックには、さすがのわたしも脱帽する」とアガサ・クリスティを驚嘆せしめた不朽の本格編。
と書いてあるのにはそそられます。
実際に読んでみると、クリスティもびっくりなのにも納得です。注意深く読めばたぶんわたしでもわかったに違いないとくやしくなりますが、それはさわやかな「やられた感」です。

次に、河野多恵子「不意の声」。これはこわい、本当にこわい話。今までに読んだ中でいちばんこわかったです。

女性の心の奥に閉じ込められているどろどろした気持ちが、あるときから垂れ流しになってしまう過程が描かれています。そういう気持ちがわたし自身にもあると実感できてしまうことがこわい。垂れ流しの結果である主人公の言動がこわい。きっと男性が読むともっとこわいと感じるでしょう。最後まで読み終えられないかもしれません。

垂れ流しになるきっかけはちょっとしたことですが、それは自分の境遇や人間関係について決定的に諦めてしまった瞬間だったと思います。よく読むと、その瞬間の直前は客観的に見れば不幸な状況で、ささやかな幸せだけを見つめて満足しています。小さな鏡でごく一部しか自分を見ないような、意図的な視野の狭さを感じます。

主人公のとった行動は極端でドラマっぽいけれども、内面については生々しい。それがこわさの出どころだと思いました。

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

ディクスン・カー / 東京創元社


不意の声 (講談社文芸文庫)

河野 多恵子 / 講談社


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by takibi-library | 2010-10-31 21:27 | いつも読書 | Comments(0)  

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