「大きなハードルと小さなハードル」読了

苦手な物語、というのがあって、(経済的な)貧しさの中に描かれるものがそのひとつです。

これまで苦労らしい苦労をしたことがなく、それはしなくてすむように両親が努力をしてくれたことなので、ありがたいと思っていますが、そのために、食うに困るとか、公共料金が払えないとかいう状況に対して、人並み以上の「恐怖感」があります。想像するだけで落ち着きがなくなり、自分でもびっくりしますが、ほんとうにぞっとします。

かといって、貧しさが主題でないものを含めて、貧しさの中に描かれる物語はたくさん、たくさん、あります。すべてを避けて通ることもあえてしていません。大丈夫そうなら読むし、これは無理、と思えばやめてしまいます。
ただ、読むかやめるかは、物語の内容自体よりも、わたし自身のコンディションによるところが大きくて、受け止められるタイミングに読めるかどうかが問題です。

前置きが長くなりましたが、「大きなハードルと小さなハードル」。「海炭市叙景」の佐藤泰志の「秀雄もの」と言われる連作短編を中心にまとめられた作品集です。

故郷を出て東京で働く秀雄には、若さがもたらすエネルギーだけはあって、それをどこへ向けたらいいかわからず、望みもしないほうへ爆発させてしまうことがしばしば。その行動そのものには共感ができないけれど、彼が抱える「あきらめられない」気持ちはひしひしと伝わってきました。そして、いつかは彼もあきらめることを想像しました。それによって得られる、ある種の落ち着きも。

その「秀雄もの」の後に続く、「僕」の物語たち。この秀雄から僕への続き方には目をみはりました。最後の「夜、鳥たちが啼く」で感じる、自分なりの前へ進む明るさがうれしかったです。

なんだかいつも以上にまとまりがないけれど、明日、職場の人にこの本を貸すことにしてしまったので、とりあえず感じたことを書いておくことにしました。

・・・ならば、これも書かなくちゃ。堀江敏幸さんの解説がこれまたすばらしいです。

大きなハードルと小さなハードル (河出文庫)

佐藤 泰志 / 河出書房新社


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by takibi-library | 2012-01-11 22:31 | いつも読書 | Comments(0)  

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