「手紙、栞を添えて」 文学を語る楽しさ、よろこび

辻邦生さんと水村美苗さんが文学について語り合う往復書簡集です。
ずっと前に読んで以来、大切にしている本のひとつ。先日文庫本を安く(下世話だ)手に入れることができたので、いよいよ文庫本葉書に入れようと思って、読み返しています。

ふたりは面識のないまま手紙をやり取りしていきます(往復書簡自体は新聞社の連載企画ですが、打ち合わせはばらばらに行ったようです)。
会わないことでより濃密になる文学論のやり取りを、いつしかわたしは物語のように読んでいました。

わたしは文学を専門的に学んでいません。文学史上に残る名作のほとんどを読んでいません(とくに外国文学)。この本で語られる作品の多くは未読で、ふたりが手紙につづった内容を正確に理解すること、共感することはできません。けれども、ある作品について言葉を尽くして語り合うことから生まれる親近感は肌身に感じ取ることができます。大げさにいうとページの間から温かい空気がふわふわと立ち上るのが見えるようです。

読み終わると、物語を読める、読むことがうれしかったり、読みながら楽しくなったりできる自分の「素朴さ」がちょっとだけとくべつな才能のように感じることができます。本が読めてよかったとしみじみ思うのです。

手紙、栞を添えて

辻 邦生 / 朝日新聞社


※現在はちくま文庫からも出ています。
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by takibi-library | 2012-02-05 10:41 | いつも読書 | Comments(0)  

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