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鴻上尚史さんの「ごあいさつ」

昨日は「音楽劇 リンダリンダ」を見てきました。

鴻上尚史さんのお芝居を観るのは2001年の第三舞台封印公演以来だと思います。お芝居そのものも楽しみでしたが、個人的にはチラシやアンケートと一緒に配られる「ごあいさつ」を読めることがとてもうれしかったです。

「ごあいさつ」はB5のノートの見開き2ページに手書きでつづられた文章です。相変わらずのB5、相変わらずの文字(そういえば台本はいまだにB5で残っているもののひとつ)。
内容は演目に関係があったりなかったり。いつも共通しているのは、はっと、強いインパクトを持って気づかされることがある、という点です(わたしの場合)。

今回は、「酒に酔って、以前演劇を通じて交流のあった若者たちの消息をインターネットで検索してしまう」という話でした。
こういう時、インターネットが人間の感性を変えたとしみじみします。それぞれの人生の今を、こんなに簡単に知ってしまうことは、直感でしかないのですが、僕の人生そのものに決してよくはないだろうと思います。
誰かの人生を知るには、インターネットのない時代は、自分の今と引き換えが条件でした。
(略)
けれどインターネットは、こっちの人生をまったく提出しないまま、相手の現在を知ることができるのです。

わたしはこれを読んで、がっくりと気落ちしました。漠然とした影としか見えていなかった違和感の正体を見せられたからです。
わたしは何も提出していないかもしれない。いろいろなことをただ乗りしているかもしれない。

こういうふうに、もやもやとした像を言葉に落とし込んでくれる、あるいはお芝居として目に見える形にしてくれることを才能というのだと思います。
鴻上さんがこれまでに書いた「ごあいさつ」をまとめた本があったらいいのに。

と思って調べたらありました。まさにそのまま「鴻上尚史のごあいさつ」。これから往来堂さんへメールします!

by takibi-library | 2012-07-15 13:03 | いつも読書  

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