「ウルトラ・ダラー」読了:物語は

昨日の深夜、読み終わりました。

おもしろかったところは、外務省の仕組みとか「公電」の扱いなどを知ることができたこと。このところあまりいい話が聞こえてこない役所だけど、外交はやはりそれなりの気概がないと勤まらない仕事だと思いました。
外交とはつまるところ公電を書き綴っていくわざなのだ。たしかに事態が動いているときには、外務大臣にも、直属の上司にすら見せない覚書はある。だが、そんなときでも、プロの外交官なら、交渉の記録だけは手元に必ず残しておく。それは、外交を委ねられた者に課せられた責務である。三十年の後、それらの外交文書は機密の封印が解かれて外交史家の手に委ねられ、歴史の裁きを受けることになる。これは外交官という職業を選んだものが受けねばならない最後の審判なのだ。
こういう仕組みになっていたこと、私は知りませんでした。
その他、世の中のちょっとした舞台裏をいろいろ垣間見ることができて、ちょっとした社会見学の気分で感心しました。

でも、事件のスリリングな展開のわりには、気分が盛り上がらなかったと思います。
理由は、登場人物の描かれ方が均一だったこと、そのわりに物語の展開や、伏線がなんだかんだ言っても相対的に単純に感じました。

どの人物もそれぞれに個性的で、ひとつひとつの描写は具体的で外見のイメージはくっきりと想像できます。着てるものとか、しぐさとか。でも、物語全体に占める人物描写が多すぎるようです。
複雑な話なのに、もうちょっと話の展開に言葉を割いてほしかったです。これだけの凝った事件と、魅力的な人たちが出てくるのですから、話が長くなっても読者を引っ張っていけたはずだと思います。

あと、最後のひとやまがおもしろくなかったです。安っぽいメロドラマ。ちょっとがっかり。
あの展開でスティーブンの魅力がすっかりなくなってしまいました。残念。

ジャーナリストとしての知識は申し分なくご開帳してくださっているのですが、つむぎだされる物語は、ちょっとかぼそいなぁと思いました。
これは小説なのですから、もっと物語を骨太にしてほしかったです。

ウルトラ・ダラー
手嶋 龍一 / 新潮社
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by takibi-library | 2006-04-05 22:48 | いつも読書 | Comments(4)  

Commented by nyankoya at 2006-04-06 07:23
作者の方がいつだかテレビに出てました。
ドキュメンタリータッチの方がよかったのかな?

そういえば、Arneの10号手に入れましたよ!
村上さん…本当に素敵な人…!
Commented by takibi-library at 2006-04-07 00:54
本の内容の一部は、彼が取材活動を通じで得た要素(事実)もあると思います。それがどのくらいの割合で入っているのか想像しながら読むと、おもしろいです。

Arune10号、やっぱり私も探して買います!nyankoyaさんのコメントを読んで、なんだか無性にほしくなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2006-04-07 07:03
これは作者が言いたいこと・インテリジエンスの世界と現在の世界の状況について・があってそれを小説に仕立てた、という感じがありますなね。だから純粋に小説として読もうとするとちょっと物足りないですね。作者の知識とか経験を並べているだけみたいで。でも、時代に対する警告にはなっているように思いました。
Commented by takibi-library at 2006-04-07 22:28
佐平治さん、まさにその通りです。
なんかうまく言えて(書けて)いない自分の感想がちょっと恥ずかしいですが・・・。
たしかに、手島さんがこの本に書いている世界は今まで誰も教えてくれなかったことです。そういう点での意義はとても大きいと思います。

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