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「わたしを離さないで」読了

*前回の感想*

 [注]この投稿へのコメントには、本の内容に触れたやり取りがあります。
   Amazonの内容紹介や本の背表紙等に書かれたあらすじ以上のことを
   知りたくない方は、コメントをご覧にならないでください。

おとといの晩、読み終わりました。昨日感想を書かなかったのは、なんとなくブログを更新すること自体がおっくうであったこと(寝坊したので活動時間に制限があったため)、読み終わった直後でさえ、この本について語るべき言葉が浮かばなかったことが理由です。

語るべき言葉がないというのは、キャシーが話したいことはここまでなのだから、聞き手である私はただそれを受け止めて、私自身の中に落とし込めばいいのだと思ったからです。
そして、落とし込むには少しばかり時間が必要でした。

私はこの本が好きです。
キャシーや友人達の日常も、寒い土地(イギリス)での暮らしぶりは質素だけれど、本人たちがそれなりに温かさを感じ、満足しているところがいいです。

そして、小説としては、私たちの日常をつなぎ合わせたような、とるにたらないエピソードの集合体のようでいて、たしかに切実な物語になっているところが、読みやすさであり、読者を引き込む仕掛けなのかもしれません。
いちいち考え込まずに「そういうことってあるよね」と思うことばかりなのですが、主人公たちは、私たちにはない大きな不安や悩みを抱えているということが、少しずつ砂を刷毛で払って発掘するように見えてきます。

一気に掘り出そうとすると壊れてしまうんです。だから、ゆっくりと時間をかけて、キャシーが語る言葉に耳を傾けるしかないのです。
そんな、静かな、でも興味深い小説でした。


ところで・・・①
この作品の原作者+訳者は、「日の名残り」と同じ組み合わせだそうです。
「日の名残り」も読んでみたくなりました。

ところで・・・②
イギリスが舞台ということからの私の思い込みですが、主人公のキャシーと親友のルースが回復室で食べる"ビスケット"がおいしそうだなぁと思いました。けして明るい場面ではないのですが、ビスケットがささやかに明るさをもたらしているような感じです。大げさですね。


わたしを離さないで
カズオ イシグロ / 早川書房

by takibi-library | 2006-09-17 11:47 | いつも読書  

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