「倚松庵の夢」読了

やっと読み終えることができました。読みづらかったというのではなく、読む時間がなくて、です。

この本には、著者の夫、作家の谷崎潤一郎との思い出を綴った文章が集められているのですが、中でも「薄紅梅」がせつなかったです。
夫と永劫の別れを告げる十日ほど前に、私は禁句を舌端に載せてしまった。それもいそいそと最後に気に入られていた人を連れて行こうとする人の背中に・・・・・・(略)
発作の誘発が恐ろしくて云いたいことも云えなかった私の最後の甘えだったかもしれない。
少し亢ぶった顔をチラと見せて振り返りもしないで出かけて行った。それを思うと自責の念に堪えかねる。
それまでに語られた、夫の創作を第一にすることを徹底した暮らしぶり、看病のようすを踏まえると、そんな些細なことさえ悔やむ著者の喪失感の大きさが痛々しいです。

理想の具現として生きることを求められ続けた著者の気丈さ、それを求めた谷崎の美観を美しい、やさしい言葉で表しています。このように生きた人々がいることを知ることは、私にとっては光栄なことだと思いました。


倚松庵の夢
谷崎 松子 / 中央公論新社
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by takibi-library | 2007-01-22 18:18 | いつも読書 | Comments(0)  

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