「キッチン」:許せないこと。

よしもとばななさんの「キッチン」を読んでいます。デビュー作である表題作のほか、その続編と、もうひとつ、全部で3つの物語が収められています。

よしもとばななさんのデビューは高校時代の事件でした。たくさんの人が持っていて、貸してと言えばすぐに回してもらえたと思います。
でも、読んだ同級生に「自分もそうだったけど、クヌギはたぶん物足らないと思うよ」と言われて、以来15年以上、接点のなかった「キッチン」・・・。

「キッチン」と、その続編「満月―キッチン2」に限って言うと、私は主人公たちに共感できませんでした。その境遇にも、その考え方にも。彼らが救われることには「よかったね」と思うのですが、そのうれしさはとても客観的で、その世界でともに感じることはありませんでした。

たぶん、その理由が表れているのはここかなぁと思うところがあります。
今、働いている料理の先生のアシスタントになれたことは、実は大変なことらしかった。先生は教室だけでなく、TVや雑誌の目立った仕事をたくさん持っている有名な女性なので、私がテストを受け、通った時の応募人数はものすごかったそうなのだ。後から聞いた。・・・・・・私は、駆け出しの自分が、ひと夏の勉強でそんな場所に入れたことをひどく幸運と思い、ほのかに喜んでいたけれど、スクールにお料理を習いにくる女の人たちを見ていたら、納得がいった。私とは根本的に心構えのようなものが異なっているようなのだ。
彼女たちは幸せを生きている。どんなに学んでもその幸せの域を出ないように教育されている。たぶん、あたたかな両親に。そして本当に楽しいことを、知りはしない。どちらかがいいのかなんて、人は選べない。その人はその人を生きるようにできている。幸福とは、自分が実はひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ。
この幸せの定義が許せません。
本当に楽しいことを知ることと幸せが相反するのはおかしいと思います。
両親を早くに亡くし、親代わりの祖父母とも死に別れた天涯孤独の主人公をいじめるつもりはありませんが、不幸に酔っているだけにしか思えないのです。

「デッドエンドの思い出」はよかったのですが・・・高校の同級生は慧眼であった、ということでしょうか(笑)。

キッチン
吉本 ばなな / / 角川書店
ISBN : 4041800080
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by takibi-library | 2007-03-21 23:42 | いつも読書 | Comments(0)  

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