「旨いものはうまい」:なかなか進まない理由

つまらないわけでもないのですが、2、3回繰り返し読むと、すとんと自分の心の深いところに収まるような文章なので、なかなか進みません。食べものの話なので、それほど難しい内容でもありませんが、食べものやお酒のことを、これほど「いちいち考えて」書かれた文章も珍しいのでは?と思います。

今のところ、深く納得しているのは、このくだりです。
正月だとか、大晦日だとか、その他色々とある日本の習慣は、最低の生活を確保してゐるものならば誰にでも、季節季節によつて王侯の生活をさせる為に作られたのではないだらうか。
意識的にそれを狙つたのではなくても、結果としてさうなつた。第一に、かういふ習慣は凡て儀式から生れ、儀式を伴ふものであり、ものをゆつくり楽むのには、これは考へなくてはならない条件である。今は廃れたが、元日から一週間、松の内の間は休む習慣になつてゐたのが気持の上で余裕を与へ、新年になつたといふことが頭をすつきりさせてくれる。その上で飲む酒が何級酒だらうと、又それを注ぐのが金銀の杯だらうと、ただのコップだらうと、飲む幹事がさつぱりとしてゐるのに違ひはない。王侯でも、昔は正月を待ち焦がれることがあつただらう。
この数年間、年の瀬や正月の感慨がより一層薄くなって来ていると思います。正月休みを楽しみに思う気持ち、なくしたくないです。楽しいことは多いほうがいいですから。

旨いものはうまい
吉田 健一 / / 角川春樹事務所
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by takibi-library | 2007-04-05 21:28 | いつも読書 | Comments(0)  

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