「寝ぼけ署長」:作者のまなざし

「寝ぼけ署長」、楽しく読んでいます。

いつも居眠りばかりの警察署長、五道三省には"寝ぼけ署長"というあだ名がついていて、ぽってりした体型もあり、ちょっとさえない感じです。でも、署長が離任してから、実は・・・という功績があり、寝ぼけ署長在任中はずば抜けて市の犯罪発生率が低かったことがあきらかになります。
そしてこの本は、その功績が実際に上げられたときにそばで見ることのできた、元秘書役を務めた警察官が、本の書き手に署長の活躍を語るという形式になっています。

しかし、寝ぼけ署長の人間、とりわけ貧しい者、力の無い者へのまなざしは山本周五郎自身のそれだと思います。私などがちょっと疲れていたり、ひねくれた気分のときに読むと、「なにさきれいごとだよ」と思うかもしれないような慈悲深さです。

裏長屋の暮しをみ給え、かれらは義理が固い、単なる隣りづきあいが、どんな近い親類のようにも思える、他人の不幸には一緒に泣き、たまに幸福があれば心からよろこび合う、……それはかれらが貧しく、お互い同士が援け合わなければ安心して生きてゆけないからだ、間違った事をすれば筒抜けだし、そうなれば長屋には住んでいられない、そしてかれらが住居を替えることは、そのまま生計の破綻となることが多いんだ、なるべく義理を欠かないように、間違ったことをしないように、かれらはその二つを守り神のように考えて生きているんだ、かれらほど悪事や不義理を憎むものはないんだよ

このくだりを読んで今は心温まっていますが、それがまたうれしいです。今の私は健全みたいだから。

寝ぼけ署長 (新潮文庫)
山本 周五郎 / / 新潮社
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by takibi-library | 2007-09-30 20:26 | いつも読書 | Comments(0)  

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