「花匂う」:絶妙に切り取られた、ある人生の局面

山本周五郎の「花匂う」を読んでいます。

運命として無理矢理納得するしかないような、思いもかけない不運や災難が人をどのように突き動かすかを描いた話が多い短編集です。
不運や災難というと、暗く、重々しい雰囲気になりがちです。しかし、この本はたとえ悲しい結末であろうとも、どこか晴れやかで、人のやさしさや強さがしっかりと伝わってくるので、読んだあと、空気を入れ換えたようにすがすがしい気分になります。
もちろん、悲しい終わり方ばかりでもありません。「明暗嫁問答」のような、くすくす笑いの絶えない話もちゃんと織り込まれています。

どれもかなり短い話で、登場人物の人生の数日を切り取っています。
その切り取り方が絶妙なのです。それまで彼らが歩んできた道が、語られることがなくてもこちらに伝わってくるようで、彼らのひとつひとつの選択に納得できます。短くても、端折っているのではなく、ちゃんと奥行きと広がりがあるのです。

それがどういった技術によるのかはわかりません。でも、そんなことは(私にとっては)どうでもいいのです。私は「くぅ~っ」と思いながら、楽しむために読んでいるのだから。

花匂う (新潮文庫)
山本 周五郎 / / 新潮社
ISBN : 410113443X
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by takibi-library | 2007-11-12 20:59 | いつも読書 | Comments(0)  

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