「いつか王子駅で」読了

するるる~~と読めました。すごく盛り上がるとか、先が気になってたまらないという作品ではありませんが、気持ちよく文章の流れに乗ることができました。

都電の走る街での暮らし。
小料理屋さん、古本屋さん、旋盤工のいる町工場、もんじゃ焼き、カステラ、珈琲・・・ひとつひとつはささやかな存在ですが、それがつながると「私」を静かに包む空間になります。それを読む私自身の身の回りのものも、そんなつながりを持っているのだろうかとあらためて感じ取りたくなりました。

全体的にくすんだ、乾いた印象ですが、ときどきはっとするほどなまめかしい雰囲気に出くわします。それは描かれていること自体はごくふつうの、とくべつカラフルではないことです。でも、それには不思議なときめきがあって、過ぎるとちょっとばつが悪いような気分になります。顔に出るようなことではないのに、自分の心の温度がふわっと上がっている実感があるからです。
きっと、それはこの本の「私」がひっそりと抱いている色っぽい気持ちが伝わってきているのだと思います。

堀江敏幸さんの本は今回はじめて読みましたが、ずっと気になっている作家の1人でした。
きっかけはある古本屋さんで、堀江さんの「郊外にて」を見かけたときです。表紙が松本峻介の作品(絵)でした。そのときは他にいろいろ買ってしまったのであきらめたのですが、今もあの本がまだ残っているか思い出しては、それほどしょっちゅうは行かないその町にある古本屋の棚を想像します。

今度行ったとき、まだ棚にあったら、きっと買います。

いつか王子駅で (新潮文庫)
堀江 敏幸 / / 新潮社
ISBN : 4101294712
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by takibi-library | 2008-01-28 19:31 | いつも読書 | Comments(0)  

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