「雪沼とその周辺」読了

土曜日、実家の周辺では雪になりませんでした。
しかしこの本を読んでいると、なんとなく雪に降り込められている気分になりました。堀江敏幸さんの「雪沼とその周辺」です。

この前に読んだ「いつか王子駅で」よりも乾いていて、より静謐な印象です。人と人のいろいろなつながりの形が描かれていて、その「継ぎ目」の部分に焦点が当たっているせいか、その人々の生活感が希薄なので、静かでも緊張感があります。この作品に出てくる人々は、他者をがむしゃらにつなぎとめようとはしないで、お互いが力のバランスを取ってつながっています。そのバランスは穏やかな暮らしぶりのなかでこそ均衡を維持できているように思いました。
当人たちはそのためにものすごい努力はしていないけれど、相手に対する気持ちの配分が大きくて、それを相手も余裕を持って受け取れているんです。

どこで暮らしていても、忙しいことは悪いことではないけれど、他者と忙しさの度合いが違いすぎるとバランスが取れない、その違いを正確に計れないとうまくいかないことが多いです。
そんな、経験はしているけれど言葉にしたことがないことを思いました。

雪沼とその周辺 (新潮文庫 ほ 16-2)
堀江 敏幸 / / 新潮社
ISBN : 4101294720
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by takibi-library | 2008-02-11 11:06 | いつも読書 | Comments(2)  

Commented by saheizi-inokori at 2008-02-12 14:26
いい小説でした。
”喪失””死””老い””音””匂い”などが主役、シミジミとしていてどこかに軽いユーモアもある。
文章のもつ力を感じさせてくれました。
Commented by takibi-library at 2008-02-12 22:51
saheiziさんも読んでいたのですね。うれしいです。
そう、形のないものが主役の物語でした。そして、それらを取り囲む形あるものが脇を固めていて、軽やかでかつさまざまな絵の具が重ねられたと思われる絵画のようです。

堀江さんの作品は、だいたいの雰囲気はどの作品も似ているのですが、それゆえの安心感とそれぞれの微妙な違いが魅力です。違いは「ゆれ」に近いもので、その震えが心に響くように思っています。
私には、それが心地いいです。

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