「熊の敷石」読了

この本に収められている3つの作品はすべて一人称、かつその”私”という言葉が最低限しか出てきません。

それが理由かどうかはわかりませんが、読んでいてどきどきします。
自分が”私”に寄り添っているかのような親密な感じと、”私”の視線の先を追いかけ盗み見ているような後ろめたさが交じり合うような感じです。

「いつか王子駅で」でも同じ感覚がありました。淡々としているけど、色っぽい。やっぱり、堀江敏幸さんの文章は一人称の方が好きです。

ところで、”私”は友だちのヤンの家にひとりで滞在します。
二十分ほど歩いて少し落ちついたところでまたパリのホテルに電話を入れ、今日も戻らない旨を伝えた。それからテーブルを片づけて、メモを取りながらリトレの伝記を読み進めた。ひからびたパスタを茹でてバターと塩と胡椒で味付けしたものに、パンとチーズとトマト添える簡単な食事を、昼と夜の二度繰り返し、時おりスグリの実を口に放り込みながら、あとはしんと静まり返った部屋にこもってひたすら本を読みつづけた。午後八時半近くになって、今ダブリンの友だちのところにいるとヤンから連絡があるまで、奇妙に心が落ちつくこの空間が他人の家であることをすっかり忘れていたほどだった。
今の繁忙期が終わったら、こんな時間を過ごしてみたいと思いました。自分の家ではない、でもキッチンがあるところで、本と少しの食べものを持ってこもるんです。
散歩して、本を読んで、お腹が空いたら料理をして、また本を読んで・・・想像するだけでうっとりです。

熊の敷石 (講談社文庫)
堀江 敏幸 / / 講談社
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by takibi-library | 2008-05-07 21:31 | いつも読書 | Comments(0)  

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