「山月記」:何度読んでも心にしみる。

中島敦「山月記」。
新潮文庫の今の版では、本の10ページほどの短編ですが、ページ数を数えてあらためてその完成度に驚かされます。

自らの心に巣食う”臆病な自尊心と尊大な羞恥心”という獣に内側から食い破られ、1匹の虎になってしまった主人公・李徴と、そのかつての友人の告白に耳を傾け、受け止める袁傪のやりとりは、厳しくも切ないです。

自尊心と羞恥心は人間誰もが持つ美徳でもあるのですが、それを自分で制御できないほど肥大させてしまった李徴は、もともとの聡明さゆえにより強く自分の浅ましさに打ちのめされます。
そうなってしまった原因さえも分析し、答えを得ます。でも、もう遅い。
最後その浅ましい姿を友に見せつけ、またそれを見つめることで、今生の別れを決意するふたりは、何度読んでも目が潤みます。

漢文の書き下し文のような文章は一見とっつきにくいのですが、読み始めてしまえばあっという間です。
今年も“100冊”に入っていますが、私が不安になるまでもなく、確実に読み継がれるだろうと信じている作品です。

李陵・山月記 (新潮文庫)
中島 敦 / / 新潮社
ISBN : 4101077010
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by takibi-library | 2008-07-09 08:14 | いつも読書 | Comments(4)  

Commented by ヨシカズ at 2008-07-09 19:06 x
確実に読み継がれてました。
というのも、現代文の教科書に載っていました。教科書会社によってはあったり無かったりなのかも知れませんが。
山月記は唯一教科書において、しっかりした存在感とおもしろさがありました。
Commented by takibi-library at 2008-07-09 22:18
わぁ、今も教科書に載っているんですね。なんだかうれしいです。
こういう作品はずっと残しておいてほしいと思います。
Commented by bara_aya at 2008-07-13 21:45
教科書で読んだきりで、その頃は話の内容より出身地がものすごく近くということへの親近感?の方が強かったです。
つい最近あらすじですが触れる機会があって、読みたいと思っているところです。
Commented by takibi-library at 2008-07-14 09:08
「山月記」は本当に短い(10ページくらい)なので、ぜひ読んでみてください。悲劇ではあるのですが、清々しさの残る作品です。

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