「袋小路の男」読了

以前、ブックピックの友だちがここちで紹介したときに、いつか読もうと思った本です。私にとっては2冊目の絲山作品になります。

表題作の“袋小路”は、もともとは比ゆ的な意味ではなくその男の家が袋小路にあるからですが、あらすじからもわかるように、主人公にとってその男の存在について考えることは、袋小路に入りこむことでもありました。

ささやかなことをもらさず描くことで、思いの強さ(よくも悪くも)がひしひしと伝わってくるのだと思います。ただ、私はこの主人公の気持ちには共感しません。人間誰しもひとりよがりな一面を持っていますが、主人公の場合は報われない境遇に、報われない自分によっていると感じました。そして、その酔い方についていけませんでした。

この本にはあと2つ、あわせて3つの短編小説が収録されています。残り2作のうち、1作は「小田切孝の言い分」という、主人公の一人称で語られる表題作を三人称で書き直した話です。私はこちらのほうがおもしろく読みました。

最後の「アーリオ・オーリオ」は独り者の男とその姪が文通をする話です。二人が話題にする宇宙や天体が、距離と時間について考えさせてくれる、静かだけれど、読み終わったあと余韻がある作品です。3つの中ではいちばん気に入りました。

袋小路の男 (講談社文庫 い 113-2)
絲山 秋子 / / 講談社
ISBN : 4062758849
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by takibi-library | 2008-07-16 09:16 | いつも読書 | Comments(2)  

Commented by bara_aya at 2008-07-16 23:27
私はこれが一番最初の絲山作品で、そのせいかやはり一番心に残る一冊です。
自分のブログにも書いたようにやはり意見が分かれる作品ですね。
Commented by takibi-library at 2008-07-17 07:51
私の1冊目は「イッツ・オンリー・トーク」でした。こちらも表題作になっていない話のほうが好きでした。

「袋小路の男」で描かれている恋愛関係や、小田切孝のような男性は身の回りでは見ないので、こういうのもあるんだなーと思います。

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