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鮮やかな話と、こわい話を読みました。

2冊読みました。

まず、鮮やかな話。ディクスン・カーの「皇帝のかぎ煙草入れ」です。
先日の2次会@ブックオフで買ったもので、大学時代にはミステリー研究会に所属していたWさんのおすすめ。あらすじに
「このトリックには、さすがのわたしも脱帽する」とアガサ・クリスティを驚嘆せしめた不朽の本格編。
と書いてあるのにはそそられます。
実際に読んでみると、クリスティもびっくりなのにも納得です。注意深く読めばたぶんわたしでもわかったに違いないとくやしくなりますが、それはさわやかな「やられた感」です。

次に、河野多恵子「不意の声」。これはこわい、本当にこわい話。今までに読んだ中でいちばんこわかったです。

女性の心の奥に閉じ込められているどろどろした気持ちが、あるときから垂れ流しになってしまう過程が描かれています。そういう気持ちがわたし自身にもあると実感できてしまうことがこわい。垂れ流しの結果である主人公の言動がこわい。きっと男性が読むともっとこわいと感じるでしょう。最後まで読み終えられないかもしれません。

垂れ流しになるきっかけはちょっとしたことですが、それは自分の境遇や人間関係について決定的に諦めてしまった瞬間だったと思います。よく読むと、その瞬間の直前は客観的に見れば不幸な状況で、ささやかな幸せだけを見つめて満足しています。小さな鏡でごく一部しか自分を見ないような、意図的な視野の狭さを感じます。

主人公のとった行動は極端でドラマっぽいけれども、内面については生々しい。それがこわさの出どころだと思いました。

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

ディクスン・カー / 東京創元社


不意の声 (講談社文芸文庫)

河野 多恵子 / 講談社


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by takibi-library | 2010-10-31 21:27 | いつも読書 | Comments(0)  

とりあえず3冊読みました。

先日の読書会のあと、読書会メンバーとお店近くのブックオフへ繰り出し、WさんとBさんに文庫本葉書向きの本をいろいろ選んでもらいました。

20冊くらい(笑)。は~、読みでがありますよ。で、その中から、3冊読みました。

◇江國香織「赤い長靴」
 夫婦の話。はじめから終わりまで低め安定の不穏なムード。
 妻目線と夫目線のすれ違いっぷりが謎のといえば謎ですが、だれも追及しない謎は、
 わたしにはあんまり気分のいいものではなかったです。
 けれども、すごいといえばすごい話。

◇五木寛之「燃える秋」
 読書会で話題になった“囲われ文学”(笑)。これは引用のし甲斐がある感じ。
 個人的にはあとがきの文章に「おお~」っとなりました。

◇柴崎友香「その街の今は」
 よかったです。この3冊の中ではいちばん。町への愛着がいやみなく描かれていました。
 大阪弁がわたしにはちょっと厳しかったけど、あったかい気持ちになりました。

赤い長靴 (文春文庫)

江國 香織 / 文藝春秋


燃える秋 (集英社文庫)

五木 寛之 / 集英社


その街の今は (新潮文庫)

柴崎 友香 / 新潮社


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by takibi-library | 2010-10-20 23:10 | いつも読書 | Comments(0)  

「妻の超然」読了

連載中の周囲の評判から、今月の読書会の課題図書にした本です。
先週、その会も終わりましたが、ハードカバーで買って損はない作品だったと思います。

この本には超然シリーズ(?)3話が収録されています。
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◇「妻の超然」
浮気をしている夫を持つ妻の話。
そういったことを全てひっくるめたときに名付けるべき言葉は、超然ではなく、怠慢というのではないだろうか。
という一文にはやられました。

◇「下戸の超然」
下戸の男性と酒飲みのガールフレンドの話。男性のガールフレンドに対して次第に募らせていく(お酒がらみに限らない)いらだち、不満に共感。
そして自分が一番嫌いなものがわかった。
ポジティブな不毛。
えぇ、わたしも嫌いです。

◇「作家の超然」
タイトルからして、著者の身に起こったことなのかしらと下世話な推測にかられつつ読むと、ショックが大きい。ちょっときつかった。

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この先、超然シリーズが続く可能性は少なそうですが、読書会で「読んでみたい超然」として「子どもの超然」が上りました。これにはわたしも大賛成。

超然シリーズ、続いてほしいものです。

妻の超然

絲山 秋子 / 新潮社


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by takibi-library | 2010-10-19 21:06 | いつも読書 | Comments(0)  

「紫の山」読了

文庫本葉書の中身に幅を持たせたくて、買っておいた本です。
30代後半から50代くらいまでの女性の、人生におけるさまざまな局面が描かれる短編集です。

どの話でも目覚しい結末には至らず、けっきょく現状維持だったり、なにごともなくすぎてしまったりするのですが、それがかえって現実的な印象を与えるようでした。

このくらいの年齢の女性は、日常のふとした瞬間にぽっかりと口をあけている迷いの穴にはまってしまうことがあるものなのでしょうか。私は今のところ経験がないのですが、この本を読むと、そんなことを考えました。ただ、この本の時代と現代では社会通念も、女性(男性)の立場も違うということが、読み終わる頃に強く印象づけられます。

その変化が、いいか、悪いかではなく、先人の物語として、とても興味深い作品です。
また見つけたら芝木好子さんの本は手にとりたいと思います。

紫の山 (講談社文庫)

芝木 好子 / 講談社


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by takibi-library | 2010-10-14 09:47 | いつも読書 | Comments(0)  

「あさ・ひる・ばん・茶」読了

長尾智子さんの食エッセイです。寝る前にひとつ、ふたつ、ちびちびと読んでいました。
落ち着いた文章と、静かな挿絵が夜の読書にしっくりきました。

材料と向かい合う気持ちや、旅先でのその土地の食品の印象、長尾さんの考えがまとまっている一冊で、明日、自分は何を食べるかをいつになくまじめに考えつつ眠りにつきました。

長尾さんのレシピはシンプルなものが多いと思います。でも、それは「簡単」なのではなく、欠けてはいけない要素だけでできあがっている、というイメージです。ストイックな感じ。かといって、手の届かないところにあるわけじゃなくて、「そうなんだ!」という新しい気づきとして驚かされます。

この本ですぐ試してみたのは、ミネストローネを作るときに野菜を炒めないこと。水だけで煮込んで、食べるときに軽くオリーブオイルをひとたらししました。
ほんの少しの油でじゅうぶんボリュームを感じる味になりました。この作り方は今年のスープの基本になりそうです。

あと、デザートから献立を組み立てることを、この秋から冬にかけてやってみたいです。

あさ・ひる・ばん・茶

長尾 智子 / 文化出版局


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by takibi-library | 2010-10-04 23:24 | いつも読書 | Comments(0)