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最近読んだもの:島田雅彦、松本清張、倉橋由美子

ひとつ読み終わると、まったく違うタイプものが読みたくなって、買いだめした中から(7、80冊くらい、古いキャリーバッグに詰めてあります)、出したり戻したりしながら選び出しています。

■島田雅彦「子どもを救え!」
 川上弘美さんの書評本で知った、「優しいサヨクの嬉遊曲」のその後の話。
 主人公、千鳥姫彦は30代半ばで、小説家になっていました。
 目論見どおりバージニヤことみどりと結婚して、子どもも2人います。
 でも、2、3人の浮気相手がいて、みどりには相手にされなくなりつつあって……という状況です。

 「優しい~」を読みかえしてから読んだので、時間の経過、時代の移ろいが鮮明に感じられました。
 年齢を重ねた千鳥は思いのほか女たらしだったけど、相変わらずひたすらに考え続けていました。
 「優しい~」の最後でみどりが千鳥に指摘したことは、まさに千鳥の本質を突いていたことになります。

 またしばらくして、50代にさしかかるくらいの千鳥の物語ができたらぜひ読みたいです。


■松本清張「点と線」
 東京駅のホームのトリックは知っていたけれど、実際に読んだことはなかった作品。
 昭和の社会はサスペンスは、はつらつとした若い刑事さんの活躍がまぶしくて、
 事件がもたらす影を消してくれるので、読んでいて楽しいです。
 警視庁の若い刑事が最後に、事件解決に協力してくれた、
 福岡県警の所轄の老刑事へ書いた手紙で真相が明らかにされるという終わり方が気に入りました。


■倉橋由美子「夢の通い路」
 倉橋作品の多くに登場する「桂子さん」が、歴史上の人物や物語の登場人物と語りあう短編集。
 桂子さんには向こう側の世界にするりと入っていける能力があって、
 (おそらくそのせいで)向こう側の人をこちらの世界へ呼び寄せて、一緒に歩いたりもできます。
 
 そんな桂子さんと心を通わせる向こう側の人のひとりには西行がいて、
 その西行の言う「遁世」の意味が興味深かったです。

 うつくしいまぼろしに包まれるような読み心地は、倉橋由美子ならでは。
 やっぱりたまにはこういうのも読みたいと思います。
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by takibi-library | 2011-01-24 10:58 | いつも読書 | Comments(0)  

製本教室 第1回 本をバラす

こないだの日曜日から空想製本屋・本間あずささんの製本教室がはじまりました。

本間さんの個展を見て「いつかわたしも製本を依頼したいです」と書いてから1年ほどして、本間さんがブックピックに興味を持って連絡をくださったとき、「あの本間さんだ!」とたいそう興奮したものです。今ではブックピックのメンバー同士、友だちづきあいさせてもらっていますが、依頼する前に自分で挑戦することになるとは、またもやびっくりです。

この教室では、手持ちの本を糸とじ、角背のハードカバーの本に仕立てます。
材料になる本は糸とじであることが条件だったのですが、わたしが手がけたいと思った本は、残念ながら無線とじ。しかし、事前に相談した結果、手間が増えるもののこつこつやればできそうだったので、思い切って無線とじ→糸とじにチャレンジすることになりました。

その本はこちら。「家庭でできる和洋菓子」、初版昭和35年!
扉をはじめ複数個所におそらくわたしが(あるいは妹が)落書きした鉛筆書きの線(絵でも字でもない……)があったり、母のメモがあったり、何度も作っているうちにページが取れていたり、「本」としてはギリギリの状態です。

ここはわたしが救わなければ。

ということで、はらはら、わくわくの教室が始まりました。

1回目の内容
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by takibi-library | 2011-01-22 16:05 | 製本教室 | Comments(0)  

最近読んだもの:村上春樹、山崎ナオコーラ、絲山秋子

文庫本葉書用に買って読んだもの。

■村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」

 村上さんの本でいちばん好きなもののひとつ(ほんとうのいちばんは選べない)。
 とても久しぶりに読んだのですが、やっぱりいい。
 収められている作品では「午後の最後の芝生」が好きです。
 でも、引用は違う作品になりそう。

■山崎ナオコーラ「人のセックスを笑うな」

 ナオコーラさんの作品は、はじめて読みました。
 すすめられてはいたのですが、巡り会わせが悪かったみたいで、遅くなってしまいました。
 なんとなく、今まで読んだことないかも?と思う文章でした。
 不快ではないけどちょっととまどいを覚えました。さらっとした結末は好き。

■絲山秋子「ニート」

 絲山さんの作品には、のんきなわたしには痛すぎるものがあります。
 この本は痛すぎの類。あまりいい気分がしませんでした。
 (わたしは本を読んでいい気分になりたいのです。)
 けれども、そういう本はたまには読んだほうがいいとも思うし、
 とてもうつくしい一節が見つかったし、文庫本葉書にはうってつけかもしれません。
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by takibi-library | 2011-01-12 20:57 | いつも読書 | Comments(0)  

「SOSの猿」読了:「SARU」の競作

話題の競作、五十嵐大介さんの「SARU」と伊坂幸太郎さんの「SOSの猿」。
アルバイト先の同僚が伊坂ファンで「SOSの猿」を持っているというので、わたしの「SARU」と正月休みの前に交換して読みました。

全然雰囲気が違います。

「SOS~」は東京都その近郊で展開していきます(「SARU」のほうは全世界を舞台にする壮大な物語でした)。
イタリアでエクソシストの助手をしていたことがあり、帰国後家電量販店で働く“私”と、株の誤発注事件の原因究明に当たるシステムエンジニア、主人公は2人。それぞれがそれぞれの事件を探るうちにつながっていくという展開です。

ミステリではないせいか、わたしが読んだことのある伊坂作品で感じられた「どうなっちゃうの?うわー」という、追い立てられる感じは控えめでした。それを期待してなくもなかったので、すこしさびしいところです(黒澤さんも出てこないしね!)。
それから、暴力の是非について問答が繰り返されるのですが、このテーマは、最終的にどうなったんだろう・・・と読み終わってから思ってしまいました。それなりに物語の終点を感じることはできた(カタルシスはあった)のだけれど、思い出しちゃうと気になるところです。

「SARU」との関係性は、“孫悟空”とそのほかの、両方に共通するいくつかの固有名詞によって、対を成す物語が点でつながっている印象です。交わりはしない感じ。個人的には「SARU」のほうが満足度高いです。

こういう“競作”という組み合わせの作品を読むのがはじめてで、だからどうなのかというと「ふうん」というだけなのだけれど、同じ材料で全然違う献立ができあがるものなのだ、ということだけはよくわかりました。

SARU 上 (IKKI COMIX)

五十嵐大介 / 小学館


SOSの猿

伊坂 幸太郎 / 中央公論新社


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by takibi-library | 2011-01-12 20:38 | いつも読書 | Comments(0)  

2010年の3冊

あけましておめでとうございます。

遅ればせながら、昨年読んだ中でとくに印象に残った、これからの本選びが変わるような本を選びました。

彼女のいる背表紙

堀江 敏幸 / マガジンハウス


重くはないのに、自然と考えさせられるエッセイ集です。少し前まで、女性についての(ざっくりすぎですが)エッセイってなんとなくなじめなかったり、はずかしかったりしたのですが、この本は大丈夫でした。それはやっぱり堀江さんだから?


夕子ちゃんの近道 (講談社文庫)

長嶋 有 / 講談社


2010年にはじめて読んだ作家さんのひとりが長嶋有さんでした。結果として何も起こらないけれど、物語がちゃんとあるところが好きなんだと思います。これから出る新作はもれなく読みたいです。


珈琲時間 (アフタヌーンKC)

豊田 徹也 / 講談社


最初に読んだ「アンダーカレント」につづいて読んで、好きなまんが家を聞かれたときに豊田徹也さんの名前を挙げるようになりました。どちらも日常の、あるいは人生の、ほの暗いところと穏やかな光を感じることができて気に入っています。
この2冊が古本屋で均一にまぎれていると、思わず救出してしまいます。
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by takibi-library | 2011-01-02 21:01 | いつも読書 | Comments(0)