タグ:小説 ( 180 ) タグの人気記事

 

「追想五断章」読了

続けざまに米澤穂信です。けっこうはまってて、文庫本葉書の材料仕入れのときに見つけると、均一じゃなくても買っちゃいます(個人蔵書として!)

主人公・芳光は、経済的な事情で大学を休学し、叔父の営む古書店に店番を手伝いつつ居候しています。
自分の境遇を嘆くでも、社会を恨むでもなく、淡々とした暮らしぶりのなかで、いつか大学に戻りたいと切望しています。そこに「父の文章が掲載された雑誌を探している」という女性客がやってきて、はじめは報酬目当てでその仕事を受けるのですが、思いがけず複雑な事情に接することとなり、迷いながらも真相に迫っていく物語です。

依頼主の探す文章は5つのリドルストーリーです。しかし、書き手である彼女の父親はそれぞれに書かれなかった最後の1文を残していて、組み合わせることで浮かび上がる事実を追うのが、謎解きの大雑把な筋です。

ミステリとしてどうかはわからないのですが、芳光の心境の変化が物語としておもしろかったです。
お金がほしいこと、叔父、母との関係、謎への好奇心、すべてに対する不安、冷めているようでどろどろした思いや、かっかする熱っぽさをちゃんと持っている、探偵役でありながらとても生々しい存在でした。

もしこれを芳光と同じ年頃で読んでいたらどう感じたかな、昔の自分に読ませてみたいような気がします。
(でも、今とはだいぶ社会情勢が違うからな……なにせ20年くらい前だから・笑。)

追想五断章 (集英社文庫)

米澤 穂信 / 集英社


[PR]

by takibi-library | 2012-09-09 22:49 | いつも読書 | Comments(0)  

「犬はどこだ」読了

感想UPがんばろうキャンペーン継続中。

探偵ものが好きです(本気のミステリファンでもないです)。
でも、探偵ものなら何でもいいのではなくて、たいていの人がそうだと思うけれど、その探偵が好きになれるか、彼(彼女)のあとを追いかけたくなるかで、その作品やシリーズが気に入るかが決まります。

好きな探偵さんを見つけると、とてもうれしくなりますが、最近の作品をちゃんとチェックしていないせいもあって、まだ生きている作家の描く、同じ時代を生きていける「好きな探偵」がいませんでした。

でした。

というのも、これから追いかけてもいいかもしれない探偵を見つけたのです。ついに。
それがこの「犬はどこだ」の主人公、紺屋長一郎、25歳。
この物語は、彼が半ばなしくずし的に探偵事務所を開業するところからはじまる、シリーズ第一作です。

訳あって、希望して入った銀行を退職し、犬探し専門の探偵事務所「紺屋S&R(サーチ&レスキュー)」をはじめたつもりが、いきなり人探しを頼まれ、探偵業に猛烈に憧れている後輩が転がり込み、今度は別の古文書の解読の相談を受け……と、紺屋くん(と、呼ぼうと決めた)の「ぼちぼち」気分をよそに、どんどん物事が進んでいきます。
けれども、たぶんもともと真面目なんでしょうね、ちゃんと物事の進みに追いついていくし、追い越そうとする。そのギアの入った瞬間に、探偵として目覚める。その瞬間を読むことができたのが、本当に楽しかったし、なんだかうれしかったです。

久しぶりに「ページを繰る手を誰か止めてください!」と思うほど、読みふけってしまいました。
だから、解説の「続編も予定されている」という言葉に大興奮。調べてみるとどうやらそう遠くはなさそうなので、今から楽しみでなりません。

続編が出たら、単行本で買いますよ、もちろん。

犬はどこだ (創元推理文庫)

米澤 穂信 / 東京創元社


[PR]

by takibi-library | 2012-09-08 21:52 | いつも読書 | Comments(0)  

「燃焼のための習作」読了

堀江敏幸さんの本は、新刊が出るたびに気になって、全部じゃないけどけっこう買ってしまいます。それは、エッセイにしろ、書評にしろ、小説にしろ、装丁がすてきで、読みたい欲求に物欲が上乗せされて、抵抗できないのです。
この本も、カップの底の形をしたしみと銀色の題字の白いカバー、表紙と見返しは同じ茶色の紙で、花布としおりひもがグレイがかったみず色。ため息ものです。(この色合わせで製本したいぞ!)

「燃焼のための秀作」は、探偵事務所の一室で繰り広げられる、とりとめなくつながっていく会話でつむがれる物語です。探偵と、助手と、依頼主、基本的には依頼内容について話しているのですが、探偵は関係のないことも話すように勧め、自分からも話し、しだいにまったく関係のないことへ話が流れていきます。外は激しい雷雨。依頼主は帰ろうにも危険で出られない。あきらめもあって、時間を気にせず、雨の勢いと雷鳴を気にしながら、話し続け、聞き続けるのです。

ただそれだけといえばそれだけの話。人によってはつまらないと思うかもしれません。
けれど、3人のいる空間の密度がゆらぐのがこちらに伝わってきて、不穏などきどきとうっとりする感覚がないまぜになるのがここちよかったです。

雷はなかったけれど、雨の日に読んでよかったな、と思いました。

燃焼のための習作

堀江 敏幸 / 講談社


[PR]

by takibi-library | 2012-07-09 00:20 | いつも読書 | Comments(0)  

「街の灯」、「水に眠る」読了

北村薫さんの本を続けて読みました。

「街の灯」はミステリーの連作短編集で、昭和初期が舞台、探偵役は士族出の家のお嬢様、英子です。彼女にはお抱えの女性運転手・別宮(べっく)がいるのですが、この時代で女性が自動車の運転をすることは珍しく、また別宮は武術と拳銃の扱いを身につけています。
お嬢様と女性運転手では、運転手のほうが探偵役にうってつけのように感じますが、そうじゃないところが、おもしろいです。お嬢様なので、ひとりで街を歩けなかったり、お付き合いが多かったり、制約も多いのですが、想像力をフルに使って仮説を立てていきます。
時代の雰囲気と謎解き、どちらもほどよくて、平日の昼休みなんかにちょっとずつ読むのにちょうどいい感じです。

「水に眠る」のほうは、ミステリーではないのですが、少し不思議な話が集められています。表題作は水割りに使う水の話。わたしはいちばん不思議に感じた話です。怖くはなくて、ほんとうにあったらいいなと思ってしまうような不思議な話。
中にはちょっと怖い話もありますが、いろいろな話があって、読み手それぞれがお気に入りを見つけられるんじゃないかな。ちなみに、1話ごとに別々の書き手による解説がついています。それもお楽しみ。

街の灯 (文春文庫)

北村 薫 / 文藝春秋


水に眠る (文春文庫)

北村 薫 / 文藝春秋


[PR]

by takibi-library | 2012-04-03 22:57 | いつも読書 | Comments(0)  

「ミミズクとオリーブ」読了

分厚い本にかまけてばかりはいられません。

持ち歩き用→文庫本葉書用として物理的にも読みごたえも軽めの本を開拓しました。
芦原すなおさんの作品ははじめてです。以前、この作品の続編にあたる「嫁洗い池」の書評をどこかで読んだ気がして(いろいろ思い返してもソースを特定できなかった)、買ってみました。

主人公は八王子の郊外に和裁が得意な妻と暮らす小説家。ベストセラー作家じゃなけれど食べるのに困らない程度に仕事がある感じです。
この二人暮らしの家には、小説家の同級生である刑事によって謎が持ち込まれ、妻は、その知人から話を聞いて謎を解いていく連作短編になっています。探偵役である妻は、当人の話では不足とあらば小説家を現場に出向かせる、徹底した安楽椅子探偵です。

ミステリとしてはちょっと弱い、と思ってしまいました。けれども、妻の作る四国の郷土料理が魅力的。同級生の刑事は、その料理が目当てで手ごろな謎を見繕っているのではないかと思えます(そのくらい、ミステリとしてはどうかしら?と)。
そして、小説家と妻のどうでもいいようなやりとり、妻が小説家をうまいことあしらっている様が、のどかです。

おいしそうな食べものと、のどかな雰囲気。無理なく、楽しく読めるっていいな~と気づかされました。がしがし読んでいるばかりだと、こういうしみじみした楽しさが身にしみるものですね。

ミミズクとオリーブ (創元推理文庫)

芦原 すなお / 東京創元社


[PR]

by takibi-library | 2012-02-25 22:28 | いつも読書 | Comments(4)  

重量級が続く

今年最初に買った本のひとつが「クリスマスのフロスト」だったのですが、これが、500ページ超。

続く「フロスト日和」が700ページ超。

さらにこれから「日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集」(750ページ超)、渡辺温「アンドロギュノスの裔」(600ページ超)と、重量級ばかりを攻めていく予定。

これらは分厚い=重いので持ち歩かず家で読んでいます。なるべく家にいたいこの頃。
そして、分厚い=文庫本葉書にできない。完全に趣味の読書です!
さらに、分厚い=本棚で幅を利かす。5冊出してもフロスト2冊しか入らず!

分厚いことに、けっこうはしゃいでいます。

この4冊にはけっこう(お金が)かかっているのだから、ちょっとくらいはしゃいだっていいと思うんだ。
[PR]

by takibi-library | 2012-02-16 22:43 | いつも読書 | Comments(2)  

「クリスマスのフロスト」読了

おもしろかった! 久しぶりに「これははまる!」と思いました。

フロストは、イギリスの片田舎の警察署に勤務しています。ある事件での活躍がきっかけで警部の肩書を持ってはいますが、よれよれのコートがトレードマーク。このフロスト警部のキャラクターが原動力となっているミステリーです。

クリスマス休暇はもうすぐだというのに、事件はそんなことはおかまいなしに続々と発生します。それらに対しモグラたたきのように奮闘するフロストですが、時間も身なりも気にせず、直感で(見ようによってはやみくもに)突き進み、話題といえば死体か下ネタ。その様子に、ロンドンから赴任したばかりの新米刑事のクライヴはいつもいらだっています。
フロストとクライブ、経歴、ポジション、世代、嗜好、なにからなにまで合わないふたりの組み合わせがおもしろいです。

クライヴは反発してばかりですが、フロストのほうは気にもせず、ときどき打ち明け話をします。これがいい!
打ち明け話にクライヴは受け答えに困るのですが、職場って、打ち明け話なくしては回らないものなのだから。
続編読む気満々なので、このさきふたりの関係がどう変化していくのか、それが描かれるのか、楽しみでたまりません。でも、すぐは買いません。もったいないからここぞというときにとっておこうと思います。

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

R.D ウィングフィールド / 東京創元社


[PR]

by takibi-library | 2012-01-19 21:42 | いつも読書 | Comments(0)  

「大きなハードルと小さなハードル」読了

苦手な物語、というのがあって、(経済的な)貧しさの中に描かれるものがそのひとつです。

これまで苦労らしい苦労をしたことがなく、それはしなくてすむように両親が努力をしてくれたことなので、ありがたいと思っていますが、そのために、食うに困るとか、公共料金が払えないとかいう状況に対して、人並み以上の「恐怖感」があります。想像するだけで落ち着きがなくなり、自分でもびっくりしますが、ほんとうにぞっとします。

かといって、貧しさが主題でないものを含めて、貧しさの中に描かれる物語はたくさん、たくさん、あります。すべてを避けて通ることもあえてしていません。大丈夫そうなら読むし、これは無理、と思えばやめてしまいます。
ただ、読むかやめるかは、物語の内容自体よりも、わたし自身のコンディションによるところが大きくて、受け止められるタイミングに読めるかどうかが問題です。

前置きが長くなりましたが、「大きなハードルと小さなハードル」。「海炭市叙景」の佐藤泰志の「秀雄もの」と言われる連作短編を中心にまとめられた作品集です。

故郷を出て東京で働く秀雄には、若さがもたらすエネルギーだけはあって、それをどこへ向けたらいいかわからず、望みもしないほうへ爆発させてしまうことがしばしば。その行動そのものには共感ができないけれど、彼が抱える「あきらめられない」気持ちはひしひしと伝わってきました。そして、いつかは彼もあきらめることを想像しました。それによって得られる、ある種の落ち着きも。

その「秀雄もの」の後に続く、「僕」の物語たち。この秀雄から僕への続き方には目をみはりました。最後の「夜、鳥たちが啼く」で感じる、自分なりの前へ進む明るさがうれしかったです。

なんだかいつも以上にまとまりがないけれど、明日、職場の人にこの本を貸すことにしてしまったので、とりあえず感じたことを書いておくことにしました。

・・・ならば、これも書かなくちゃ。堀江敏幸さんの解説がこれまたすばらしいです。

大きなハードルと小さなハードル (河出文庫)

佐藤 泰志 / 河出書房新社


[PR]

by takibi-library | 2012-01-11 22:31 | いつも読書 | Comments(0)  

2011年の3冊

今年はブログに読書記録を書かずにすますことが多々あったため、3冊選ぶのに苦労しました。2011年の反省点として、来年(つまり、明日から)改善したいと思います。

それでも、3冊は選びました。傾向はバラバラですが、共通して言えるのは何かしら「がつん」ときた、ってことかな。

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

小川 洋子 / 文藝春秋



3冊は順不同なのですが、1冊選べと言われたら、たぶんこの「猫を抱いて象と泳ぐ」にすると思います。この本を読んで、物語に餓えたら小川洋子さん、と心に決めました。

海炭市叙景 (小学館文庫)

佐藤 泰志 / 小学館



佐藤泰志という作家を知るきっかけになった本。華やかではないけれど、ていねいな感じが好きです。ちょうど今「大きなハードルと小さなハードル」を読んでいます。

せんだいノート―ミュージアムって何だろう?

仙台市市民文化事業団



「せんだいノート」については、まだこのブログには書いていない、いえ、正確に言うと、書きかけで「非公開」にしてあります。まだ未消化のことが多くて、書ききれていません。
未消化と言っても「せんだいノート」の自体の内容ではなくて、6月に仙台を訪ねたこと、友だちがたくさんできたこと、彼女、彼たちとの(おもにtwitterでの)交流からわたしが考え続けていることが、まだ自分の中で落ち着かないのです。

「せんだいノート」のこと、仙台のこと、1月中にUPしたいと思います。

では、来年もどうぞよろしく。
[PR]

by takibi-library | 2011-12-31 11:39 | いつも読書 | Comments(4)  

「ぼくは落ち着きがない」読了

久しぶりにスカッとした。そんな読後感。

ある高校の読書部のなんてことない日常を描いた物語。でも今のわたしが読むと、すべてがまぶしく見えました。高校ってこんなだったな。
わたし自身は部活動の経験がないのですが、違うクラスの友だちとのつながりや、放課後の図書室で過ごす時間の質感が、「こんなだった」と思いました。

同い年でも大人に見える女子の頼もしい様子、やんちゃな男子の信念を垣間見たとき、いちいちどきどきしていたなぁと思います。
この本を読む時間は、そんなことを思いつつ、本の中の高校生たちをほほえましくながめるのが楽しいひとときでした。

この先、ちょっと楽しい気分が足らないとき、読み返したいです。


ぼくは落ち着きがない (光文社文庫)

長嶋 有 / 光文社


[PR]

by takibi-library | 2011-12-18 14:08 | いつも読書 | Comments(0)