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「水辺にて」読了

おもしろかったです。

カヤックを操る梨木さんの目には、いたるところに物語のきっかけが見えるようです。その過程が難しくない言葉で、ロジカルに書かれているので、カヤックに乗ったら私にも見えちゃうのかななんて思うくらい、物語のきっかけを見つける瞬間のことがわかりました。

印象的なのは、各章の最後の数行。その数行が、ほんとうにすばらしい。
〈発信、受信。この藪を抜けて〉
 明るく、豊饒な孤独。
 今はこの考えの方向性を気に入っている。
 豊かな孤独。そちらの方から、少し明るい、軽やかな空気が流れてくるような気がして。メランコリーは私をろくな場所に導かない。

 この藪を抜けて、舳先を、明るい方へ向けよう。
〈常若の国3〉
 私はゾクゾクとワクワクが奇妙に入り交じった、「身の毛のよだつ」感じを味わいながら、船着場に帰ろうとしている。
 物語の予感は、いつでもこんな風にやってくる。
〈アザラシの娘3〉
 with desperate effort
 激しく希求する心。そのための、命がけの努力。

引用し始めるとけっきょく全部書くことになりそうな・・・。
いつか文庫化されたあかつきには!って、やっぱりそこへ行き着いてしまう。悲しい性です。

水辺にて―on the water/off the water

梨木 香歩 / 筑摩書房


by takibi-library | 2010-01-28 22:01 | いつも読書  

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